涙道治療とは

涙道治療イメージ

涙道とは、涙の排出路のことですが、涙というのは涙点から、涙小管、涙嚢、鼻涙管を通り、最終的には鼻腔に達する管のことを指します。この涙道に何らかの症状や異常、病気などが生じている状態が涙道疾患(涙道狭窄 等)です。当院では、この涙道疾患に対する治療も行っています。

涙道狭窄

涙道狭窄(閉塞)とは

涙道が何かしらの原因によって、狭窄もしくは閉塞してしまうことで、涙液が正常に排出されていない状態を指します。この場合、先天性と後天性に分類されますが、ここでは後天性について説明します。

涙というのは、先述した通り、涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管を通り、鼻腔へと到達するわけですが、これら涙道に狭窄や閉塞が生じると涙は排出されなくなります。涙道がつまりを起こす原因としては、感染症やアレルギー、膠原病などを原因とした炎症、薬剤、手術、外傷といったことが考えられます。そして、涙液の通過障害が生じると、涙が出やすい、目やに、結膜炎といった症状が起きるほか、詰まった箇所の手前で涙液は溜まるわけですが、そこで雑菌が繁殖するなどして、涙のう炎などを発症することもあります。

検査について

患者さまの症状などから涙道狭窄が考えられると診断をつけるための検査を行います。この場合、涙道洗浄検査として、涙点から生理食塩水を注入して、鼻腔まで流れてくるか否かを確認していきます。さらに、涙点から内視鏡を挿入し(点眼による局所麻酔)、涙道の内部の様子を観察する内視鏡検査、造影剤を涙点から注入してX線撮影(レントゲン検査)を行います。また、涙道の内部の様子(狭窄・閉塞の程度)を確認する涙道造影といった検査もあります。

治療について

治療の目的としては、涙道の詰まりや閉塞の解除ということになります。その方法は、いくつかありますが、狭窄・閉塞している箇所に応じて異なります。

涙小管や鼻涙管が狭窄・閉塞している場合は、涙道内視鏡を使用して、涙管チューブを涙点から挿入していき、それを閉塞部位に向けて通していきます。貫通したら狭窄・閉塞部位を拡張させていき、涙道内視鏡下涙管チューブ挿入術(涙管チューブは2カ月ほど入れたまま)、鼻涙管の狭窄・閉塞の患者さまを対象にした手術として、涙のうと鼻腔の間にバイパスを作成し、涙液の通り道を作成する涙のう鼻腔吻合術という手術療法もありますが、これは骨を削る必要があるなど患者さまの負担も大きいです。

涙のう炎

涙のう炎とは

涙道の中の涙のうの部位で生じている炎症が涙のう炎です。鼻涙管閉塞の患者さまに発症するわけですが、この場合は涙のうより下の部位(鼻涙管)で閉塞が生じ、それにより涙のうに涙が溜まるようになるのですが、そこで細菌感染(原因菌は黄色ブドウ球菌 など)が発生することで炎症が生じるようになります。これを慢性涙のう炎と言い、炎症が周囲にも広がってしまう状態を急性涙のう炎と言います。ちなみに、慢性涙のう炎は、発赤や痛みなどの症状はみられませんが、急性涙のう炎になると、患部に発赤や腫れ、疼痛などが現れるようになります。

治療を行う場合、慢性涙のう炎の患者さまは、涙のう内の膿を排出する、または抗菌薬の点眼といったことをしていきます。さらに、鼻涙管の閉塞状態を解除する必要があるので、涙道内視鏡下涙管チューブ挿入術、涙のう鼻腔吻合術も行う必要があります。また、急性涙のう炎では、抗菌薬の点眼や全身投与のほか、涙のうにある膿を穿刺吸引して排出していきます。再び発症することがあれば、涙のうを摘出する、もしくは涙のう鼻腔吻合術といった手術療法を行う場合があります。

先天性涙道閉塞

先天性涙道閉塞とは

胎児期に何らかの異常が現れ、それに伴い、涙道が閉塞している状態が先天性涙道閉塞で、主に先天性鼻涙管閉塞や先天性涙点閉鎖があります。主な症状としては、出生直後から涙が出やすい、目やにが出るというのがあります。さらに、感染症を併発すると、新生児涙のう炎のほか、眼瞼皮膚炎なども見受けられるようになります。

発症の有無を調べる検査としては、主に涙道洗浄検査が行われます。そして、涙管の狭窄や閉塞状況がわかるようになります。加えて、涙点の閉鎖の有無に関しては、医師による視診で確認できることが多いです。

治療に関しては、先天性鼻涙管閉塞の場合は、成長することで鼻涙管が開通するということもありますので、まずは、抗菌薬の点眼や涙のうマッサージで経過観察をすることもあります。ただ、自然治癒が難しいことから、重症化しているということであれば、細い針金のような器具であるブジーを涙点から挿入し、閉塞部位を開通させる鼻涙管開放術を多くは乳児期に行います。ちなみに、先天性涙点閉鎖の患者さまでは、涙点切開をしていきますが、この場合は鼻涙管閉塞も伴っていることが多いことから、涙点の閉鎖が解消しても鼻涙管の閉塞の有無も確認していきます。

また、ブジーによる治療を無理に続けると癒着が起きることや、本来の涙道とは異なる別の涙道を形成してしまうこともあるので、慎重に行っていきます。

抗がん剤治療による涙道閉塞

涙道閉塞の原因は、眼球の炎症や感染、緑内障、ドライアイ、副鼻腔疾患、外傷や点眼薬の使い過ぎによるものなど多岐に渡りますが、昨今では抗がん剤の内服による涙道閉塞が問題となってきています。
抗がん剤による涙道閉塞は根治が難しく、進行すると涙道治療そのものが不可能になる場合もありますので、抗がん剤の内服を始めてから流涙が増えたという方は、ぜひお早めにご相談にお越しください。